episode 12. グランミリアン家の悲哀

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 これ見よがしに重厚なデザインの宝箱にアイテムを収めると、その人は満足げに頷いた。 「さて。これと似たような遺跡もどきを、あと何か所か仕掛けておくか」  フォ・ゴゥルはやれやれと首を振ると、なんだかうきうきと作業している無名の魔法使いを置いて姿を消した。  一方そのころ。グランミリアン家では、エルマディがよく発熱して寝込むようになった。  彼の部屋にはほとんどずっと医者か看護婦が張り付くようになり、ヴィルジニーはあまり遊びに行けなくなってしまった。  時間に余白のできたヴィルジニーは、これまで以上に熱心に勉学に励むようになった。部屋にある本はすべて読んでしまったので新しい本を買ってもらい、家庭教師のマーロウ夫人にも、魔法使いのガストンにも、これまで以上に宿題を出してもらうようにした。  ヴィルジニーは、焦っていた。 (病気を治してあげるって、約束したのに)  エルマディが約束の届かない遠いところへ行ってしまう前に、早く治療魔法を覚えなくてはいけない。  ヴィルジニーは、このとき十歳。死という言葉の意味を、おぼろげに理解する年齢になっていた。
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