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夢の世界のアイドルと
俺。田辺康太、高校2年、憧れの人の曲を作るため頑張るアマチュア作曲家。
高校2年の春、学校帰りの電車の中、咲き誇る桜も見ずに、憧れの人のLIVEをスマホで見ていた。
青いドレスを身に纏い、吸い込まれそうな黒い綺麗な髪が揺れ、水星の様な透き通った目で画面の俺を見て歌っていた。
イヤホンから響く心地よい声を発している彼女は、国民的アイドル。前島楓、17歳、人々は彼女の事を銀河に1人の逸材と言っている。
――こんな彼女が欲しいな。
叶わない戯れ言を思っていると、家の最寄り駅に着いていた。
――やべぇ!
康太が急いでカバンを持ち閉まる扉に飛び込み電車を出た、一息ついて改札を出て家の扉を開けた。
「ただいまー」
誰もいない家に挨拶をして靴を下駄箱に入れ、リビングの冷蔵庫からジュースを取りだし2階にある自分の部屋に向かった。
部屋に着き教科書がぎっしり詰まったカバンを置き、机にあるパソコンのスイッチを押した。
椅子に座り冷蔵庫から取ったジュースを飲みパソコンの立ち上げを待っていると、ピロリンとスマホの通知が鳴った。
――国民的アイドル前島楓来年の春に芸能界引退!
康太は起動するパソコンの前でフリーズして居た。
康太は3時間かけやっと自分を再起動して正常に動く事を確認した。その頃には日が暮れて部屋が暗くなっていた。
「康太ー、ご飯!」
リビングから母の声が聞こえ、ロボットの様に固く階段を降りてリビングに向かった。
リビングに行くと、家族が椅子に座ってご飯を食べていた。
「いただきます……」
康太も椅子に座りご飯を食べ始めた。テレビから流れる前島楓のLIVEでの芸能界引退宣言のニュース。知ったか専門家がドヤ顔で前島楓の今までの功績を語っていた。
「この子、芸能界引退するのね……」
と母がおかずの秋刀魚の骨を箸で取りながら言った。
「康太、ご飯は?」
「後で、食べる……」
康太はご飯が喉を通るはずも無く箸を置いて風呂場に向かった。
体を洗い湯船に浸かった。
――これから何を目標にして生きたらいいんだ?
――俺はあなたに歌って貰えるくらい凄い作曲家になろうと思ったのに。誰を目標にしたらいいんだ……?
康太は湯船に潜りもがいた。風呂場を出て体を拭き、ロボットダンスで階段を上がり自分の部屋のベットに潜り込んで目をつぶった。
――おーい!
微かに声が聞こえた。
――おーい!君!
肩を叩かれ目を開けると無限に広がる野原に前島楓が立っていた。
白いワンピースを身に纏い、ブラックホールの黒く長い髪を琥珀色のシュシュで括り、青く透き通った目で俺を見ていた。
――え?前島楓?ここはどこ?
――着いてきて!
康太が 混乱していると前島楓が康太の手を引いて空に登り始めた。
――あ!夢か!
康太が納得した顔で言うと、前島楓が康太を見て笑った。
――あー面白い
――そう!ここは夢の世界アーク!そして私はアークの管理人の前島楓、君の名前は?
空の上に立ち、康太の両手を握って言った。
――夢の、世界の、管理人?国民的アイドルじゃなくて?
――あ、あと、自分康太って、言います!
憧れの人に手を握られて恥ずかしそうに康太が言った。
――そうよ康太くん!どちらも私!夢の管理人けん国民的アイドル的な?
前島楓が首を傾げて言った。
――ここは俺の頭の中じゃないの?
――いいこと聞くね!康太くん!模範解答だよ!そう、ここは康太の頭の中じゃなく、人々が言う所の異世界だね!
俺。田辺康太、高校2年は憧れの人、前島楓に夢の世界で出会った、これから始まる夢物語その先にはどんな結末が待っているのだろうか?
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