第20話 退屈凌ぎ

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第20話 退屈凌ぎ

12時。 ポーン、ポーン、ポーンと皆の予想していなかった音が鳴る。既に皆サチュレーションの前に集まっていた。今日は何が出てくるのかと。が、サチュレーションは開かなかった。 『ご機嫌いかがでしょうか、皆様。食料も底を尽き掛けている様ですので、本日の新メンバー加入はございません。とは言っても、毎日同じ生活ではさぞ退屈でしょうから、ゲームでも致しましょう。』 「ゲームだぁ?ふざけやがって!それよりも食いもんよこしやがれ!一体誰なんだ!てめーは!」 「シッ。静かに。」 激怒する多田をゆきなが制す。ゆきなはこの後話されるであろうこのゲームについての説明が、生死に関わるであろう事を何となく悟った。それに、今日のアナウンスの声はいつもとは何かが少し違う気がする。何というか、変声されていて男女どちらとも区別がつかない事は変わりない。が、何となく今までの様な無機質感が若干無くなった様な気がする。気のせいだろうか? 『それでは、ルールを説明します。まずは今居る8人で、2人ずつの4チームを作って頂きます。組み分けは後ほどデイリーギフトと共にカードを8枚お渡ししますので、同じカード同士がペアとなります。勝ったチーム2組にはステーキを用意しております。遠慮なくご堪能くださいませ。それでは、まずデイリーギフトの受け取りとカードでの組み分けを行なってください。』 「な、なんなんでしょう?一体何が始まるんでしょうか?」 山田がドギマギしている。その数秒後、ピーッ、ピーッ、ピーッという音と共にサチュレーションが開く。そこにはガスバーナーと8枚のトランプがあった。 「チッ、ガスバーナーかよ。」 多田が舌打ちをする。多田の言いたい事はすぐに理解できた。圧倒的な殺傷能力を持った武器が欲しかったのだ。それに比べてガスバーナーは使い勝手も悪く、射程距離もかなり短い為、殺傷能力には事欠けると他のメンバーも認識した。ここでこの武器を手に入れてしまうと、次に欲する武器が届いた時に他の者に回ってしまうだろう。西山は誰もが欲しないガスバーナーをとりあえずテーブルの上に置き、皆が気になって仕方の無い8枚のトランプを手にした。 スペードのエース、ダイヤのエース、ハートのエース、クラブのエースが各2枚ずつある。 「これを一人一枚引いて同じカード同士がペアになるという事ね。とりあえず引いてみましょうか?カードを引く順番は任せるわ。私は最後の残りでいいから。」 麗華がカードをシャッフルする。 「実際カードを引く順番はほとんど関係ない。誰とペアになるかが重要。俺引きますね。」 西山が最初に一枚カードを引く。出たのはクラブのエース。 「次は俺だ。」 多田がスペードのエースを引く。 「じゃあ次は私が。」 散々迷ってさとこがハートのエースを引く。 「じゃあ私も。」 美奈子がカードを引いて青ざめる。引いたカードはスペードのエースだった。 「なんだ?不満かよ?」 多田が美奈子を睨む。 「い、いえ。」 美奈子が口籠る。 「チッ!まあいい次の奴早く引けよ。」 多田がイラつきを見せる。多田の煽りを受けてゆきながカードを引く。ダイヤのエース。これで4種類のカードが全て出揃った。その内スペードのペアはもう決定している。 「じゃあ次は私が。」 山田がカードを引く。ハートのエース。さとことのペアが決まった。 「頼りないかもしれませんがよろしくお願いします。」 山田が何歳も歳下のさとこにペコリと頭を下げる。 「こちらこそ!」 さとこが花の様な笑顔で返す。 「次は僕が。」 太一がカードを引く。出たのはダイヤのエース。ゆきなとのペアが決まった。これにより、自動的に西山と麗華のペアが決定する。 「よ、よろしくお願いします。」 本音を言うと太一とのペアは避けたかった。どんなゲームなのかは知らないけど、頼りない上に問題ばかり起こされそうな気がした。太一は「ふんっ」と鼻息をあげる。 「最後に残った私は・・・西山さんとペアね。よろしく。」 「ああ、こんな美人と組めて光栄だよ。」 褒めてはいるが目は笑っていない。
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