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「ヤバイ事になったな。」
西山が頭を抱え込む。誰もがそう思っていた。多田の暴走を止める術が無い。唯一の貴重な食糧を全て奪われてしまった。多田は強力な武器、ボウガンを常に持っている。
「もう一度よく話し合うっていうのは・・・。」
山田が提案する。
「ダメだ。あいつは情に流される様な奴じゃ無いよ。それに、話し合ったところであいつにメリットは無い。」
西山が否定する。
「せめて、ボウガンに匹敵するだけの武器があれば・・・。」
西山はふと裕二が手に持ったノコギリに目をやった。
「そういえば・・・裕二君。今まで送られてきたデイリーギフトって、今どこにあるんだ?」
西山が不思議に思って聞く。
「あー、それなら全部僕の部屋に有りますが。邪魔だし役に立たないので。」
「なあ、今裕二君の部屋にある物を・・・全部教えてくれないか?」
西山が興味を示す。
「ああ、良いですよ。えーっと、金槌、ロープ、金属バット、鎌、裁ちバサミ、アイスピック、そしてこのノコギリですね。見事に用途がバラバラな上に、何の統一性も無く、現状じゃ何の役にも立ちません。」
裕二の言う品を聞き、西山が無言で何かを考えている。
「いや・・・・・・確かに用途はバラバラだが・・・統一性は・・・有るな。」
西山が思考を巡らせながら途切れ途切れに喋る。
「統一性・・・!?有りますか??」
「・・・・・・有る!」
西山が確信した様に力強く頷く。
「もちろん、本来の使用用途とは違うし・・・物によって、その能力も違うんだが・・・少なからず全てに有るんだ・・・人を殺す・・・つまり、殺傷能力が・・・。」
西山の発言に皆が驚く。その沈黙を山田が破る。
「な、何言ってるんですか!ロープで人なんかころ・・・」
「殺せるさ。首を締めれば。」
山田の発言を西山が遮る。
「その中で、ボウガンは今のところ最強の武器だな。多田にアレを持って行かれたのは痛かった。でもまあ、それより気になるのが・・・。」
西山がある人物に振り向く。
「そんな殺傷能力のある武器を・・・何で君は独り占めしてるんだい?・・・・・・裕二君。君は何か・・・知っているんじゃないのかい?」
西山の言葉に裕二が凍りついた。
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