第14話 予期した裏切り

3/3
前へ
/169ページ
次へ
「ヤバイ事になったな。」 西山が頭を抱え込む。誰もがそう思っていた。多田の暴走を止める術が無い。唯一の貴重な食糧を全て奪われてしまった。多田は強力な武器、ボウガンを常に持っている。 「もう一度よく話し合うっていうのは・・・。」 山田が提案する。 「ダメだ。あいつは情に流される様な奴じゃ無いよ。それに、話し合ったところであいつにメリットは無い。」 西山が否定する。 「せめて、ボウガンに匹敵するだけの武器があれば・・・。」 西山はふと裕二が手に持ったノコギリに目をやった。 「そういえば・・・裕二君。今まで送られてきたデイリーギフトって、今どこにあるんだ?」 西山が不思議に思って聞く。 「あー、それなら全部僕の部屋に有りますが。邪魔だし役に立たないので。」 「なあ、今裕二君の部屋にある物を・・・全部教えてくれないか?」 西山が興味を示す。 「ああ、良いですよ。えーっと、金槌、ロープ、金属バット、鎌、裁ちバサミ、アイスピック、そしてこのノコギリですね。見事に用途がバラバラな上に、何の統一性も無く、現状じゃ何の役にも立ちません。」 裕二の言う品を聞き、西山が無言で何かを考えている。 「いや・・・・・・確かに用途はバラバラだが・・・統一性は・・・有るな。」 西山が思考を巡らせながら途切れ途切れに喋る。 「統一性・・・!?有りますか??」 「・・・・・・有る!」 西山が確信した様に力強く頷く。 「もちろん、本来の使用用途とは違うし・・・物によって、その能力も違うんだが・・・少なからず全てに有るんだ・・・人を殺す・・・つまり、殺傷能力が・・・。」 西山の発言に皆が驚く。その沈黙を山田が破る。 「な、何言ってるんですか!ロープで人なんかころ・・・」 「殺せるさ。首を締めれば。」 山田の発言を西山が遮る。 「その中で、ボウガンは今のところ最強の武器だな。多田にアレを持って行かれたのは痛かった。でもまあ、それより気になるのが・・・。」 西山がある人物に振り向く。 「そんな殺傷能力のある武器を・・・何で君は独り占めしてるんだい?・・・・・・裕二君。君は何か・・・知っているんじゃないのかい?」 西山の言葉に裕二が凍りついた。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加