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第15話 弁解
周囲の目が一斉に裕二に向けられる。
「ちょっと待ってください!裕二さんはそんな人じゃ・・・」
「いや、いい。どういう意味でしょうか?聞きましょう、西山さん。」
ゆきなの言葉を遮り裕二が西山に問い返す。
「では、遠慮なくもう一度聞こう。君は何故、凶器となり得る武器を一人で管理しているんだ?ボウガンは・・・想定外で多田に奪われたのか?本当はボウガンも君の管理下に置かれる予定だったんじゃないのか?」
西山の目は冷たい。
「誤解です!そんな訳で無いでしょ!本当にただ邪魔で役に立たなかったし、置き場所にも困ったのでとりあえず僕の部屋に置いたまでです!そもそも、今西山さんが言わなければ、アレが武器になるって認識すらありませんでした!そんな事考えた事も無かった!」
裕二は真剣かつ必死だ。
「ふーん、そう。だったら、今ある物を1人に1つずつ渡せるかい?」
「大丈夫です。全く問題有りません。」
そういうと裕二は自分の部屋へデイリーギフトで贈られてきた物を取りに行った。
「ひどいですよ!西山さん!何もあんな言い方しなくたって!」
ゆきなが西山を責める。
「こんな状況だ。何があっても不思議じゃ無い。不安要素は一つでも早く消しておいた方がいい。それよりも。何?えらく裕二君の肩を持つじゃない・・・。惚れてんの?彼、優しいし、美形だしね。」
西山がじっとゆきなの目を見つめる。
「な、何言ってるんですか!今関係無いじゃないですか!」
「ふふっ。正直だね。」
「勝手に勘違いしないでください!」
ゆきなが顔を真っ赤にして反論する。
しばらくすると裕二が戻ってきた。
「これで・・・全部です。」
裕二は今までのデイリーギフトをばら撒いた。
「では、さっき言った通り、1人1つずつ、好きな武器を選んだら良い。護身用になるので慎重に選ぶ事だね。俺は最後に選ぶよ。悪いが裕二君はさらにその後の残り物だ。疑いを晴らす為だと思って我慢してね。」
裕二は無言で何も反応を示さない。
「ぼ、僕はこれだ!どう考えてもこれが一番使いやすいだろ。」
太一が一番に金属バットを取る。
「じゃあ、私はコレ。」
麗華はアイスピックを手に取る。
「私はこれで。」
美奈子は裁ちバサミ。
「僕は金槌だ。あはは、正に鈍器って感じですね・・・。」
山田が苦笑する。
「えー!私よくわからないよー。鎌?これってどう使うのー??」
さとこが全く似合わない鎌を手に取る。
「私は・・・辞退します。9人居ますけど、道具は8個しか無いし・・・それに私は裕二さんを信じてますので。いざとなればキッチンの包丁でも使います。」
ゆきなが苦笑しながら辞退する。
「そう。じゃあ、最後に俺か。俺は・・・コレだな。」
西山は裕二の手からノコギリを奪った。最後に裕二に残ったのはロープだった。このラインナップの中では最も殺傷能力が低く、使いづらい物ではあったが、変な疑惑を解く為、待ったをかける訳にはいかなかった。
「これで・・・僕への疑心は晴れましたかね?」
裕二が不服そうに西山に聞く。
「ああ。とりあえずといったところかな。」
余りにもの上から目線に裕二が思わず西山に摑みかかる。
「やめて!裕二さん!」
ゆきなが止めに入る。初めて見た。裕二のあんな姿。普段は優しく常識のある人なのに。空腹からか、皆冷静さを欠き始めていた。
裕二はゆきなの声が耳に入りふと我に返る。西山を掴んだ手を放し、ロープを持って自分の部屋へと戻って行った。
「1人につき1つずつの武器か・・・まるで殺し合えと言わんばかりだな。」
西山がそっと呟いた。
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