第16話 似た者同士2

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「あと一歩近づいたら撃つ。」 多田の言葉を聞くなり大男が高笑いする。 「ハッハッハッハ。何があと一歩近づいたら撃つだ。今撃つ勇気と自信が無いだけだろ?どうだ?図星だろ?ハッハッハ。」 多田は何も答えない。額にはうっすらと汗が滲んでいる。 「じゃあ、お望み通りもう一歩近づいてやるよ。距離が近い方が外しにくいだろ?ハッハッハ。」 普通ではない状況に皆が固唾を呑む。 大男の右足が浮く。それはゆっくりと確かに、前方に居る多田の方向に進んできた。この瞬間全ての動作がスローモーションの様に見えた。宙を前進する大男の右足が、ゆっくりと再び床を捉えた。その瞬間、 「バシュッ!」 という音と共に多田の持つボウガンから矢が放たれた。 矢はもの凄いスピードで大男を捉える。それは見事に大男に命中した。が。 「これはなぁ、外したのと一緒だ。」 そう言うと大男は左腕に刺さったボウガンの矢を右手で抜く。抜いた傷口からは真っ赤な血が滴り落ちた。大男は抜いた矢を両手で掴み、バキッと真っ二つに折った。2つに分断された矢を大男は乱雑に床に投げ捨てる。大男はゆっくり、ゆっくりと多田に近づいて行く。多田の足がガクガクと震える。多田は大男の放つ独特の狂気と、攻撃を外した失意で既に大半の戦意を失いかけていた。大男は多田の目の前に立つと、勢いよく多田の首に喉輪をかける。苦しそうにして多田は壁際まで追い込まれる。多田の背中が壁に着いた瞬間、大男はそのまま片手だけで多田を持ち上げた。多田の両足が床を離れる。みるみるうちに多田の顔が青ざめていく。 もう意識が飛ぶのも目前であった。
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