第16話 似た者同士2

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多田龍馬 回想 俺はガキの頃から喧嘩が強かった。小学生の頃は6年間殴り合いの喧嘩で負けた事は無かった。同学年の友達はみんな俺を怖がり避けた。それを友達と呼んで良いのかどうかはわからないが、みんな俺の命令をよく聞いてくれた。いわゆるガキ大将というやつか。それは中学を卒業するまで続いた。同じ中学内で俺に喧嘩で勝てる奴は居なかった。たまに他校の生徒が喧嘩を売りにも来たが、この界隈の奴等に負けた事は一度も無かった。中学生になった俺は、小学生の時とは比べ物にならないくらいやりたい放題だった。誰も俺に文句を言ってくる奴は居ない。俺から目をつけられて仕返しされるのが怖いからだ。俺は、いつでも王様だった。高校に入るまでは。 高校は最下級の学校を選んだ。というよりもそこしか受かりそうな学校が無かった。入試で名前さえ書いておけば誰でも合格が決定するというような噂すら流れていた。誰も知らない奴ばかり。また一から王の座を築かねば。面倒くさい。そんな風に思いながら、俺は手を出してはいけない奴等に手を出してしまったんだ。 4月も後半になると、クラスの大半は俺に従う様になっていた。みんな弱すぎだろ。飽きてくるよ。 5月が終わろうとするある日、異変に気付いたんだ。見たことの無い同じ顔の人間が二人クラスに増えていた。聞いたところによると、最近転校して来た双子の兄弟なんだとか。そもそも俺は入学して以来、毎日学校へは通わないし、気が向いた時だけ登校していた。そういえばここ最近は全然登校してなかったな。その間に転校して来たのか。その割には妙にクラスに馴染んでるな。気にいらねぇ。 勝負は一瞬にして決まった。俺のパンチがかわされたと思うや否や、腹に激痛を感じる。息が出来なくなる程だ。相手の、タツジとカツジとかいう名前だったっけ?顔が一緒なのでどちらかわからないが、とてつもなく重たい蹴りを腹部に受けた。膝から崩れ落ちる。そこからはタツジとカツジの二人から殴られ続けた。2対1だから負けたんじゃない。1対1でも到底かなわなかった。教室の隅にまで追いやられた俺を、あのタツジだかカツジだかは、俺の首を締めながら、片手で俺を宙に浮かせたんだ。二人とも笑いながら俺を攻め続けるんだ。初めて心の底から恐怖を感じたよ。本当に怖かった。気付けば股の間から生暖かい液体がジョロジョロと流れていた。教室の床に広がる排泄物。意識が朦朧とする中、ふと教室の外の廊下を見たら、ケンちゃんと目が合ったんだ。幼稚園から、小学校、中学校と高校までも一緒だった唯一の幼馴染。ケンちゃん、この学校に来てたんだな。知らなかったよ。ケンちゃん、助けてくれよ。苦しいよ。怖いよ。でもケンちゃんは、しばらく俺を見た後、俺を助ける事もなく、軽く笑ってどこかに行っちゃったんだ。後でわかったことなんだが、ケンちゃん、この二人と同じバンドのメンバーなんだってな。知らなかったよ。今まで虐めてごめんね。 王の座は呆気なく奪われた。それからの3年間は地獄だった。付けられたあだ名は多田龍馬(ただりょうま)をアレンジされてダダ漏れ龍馬。毎日学校に行く様になった。いや、正確に言えば、タツジとカツジに毎日来る様に命令されていた。事ある毎に二人に殴られた。二人は他のクラスメイトには優しいんだ。俺だけが3年間ずっと標的だった。自業自得といえばそれまでだが。今は幼稚園、小学校、中学校と、10年以上虐めてきたケンちゃんまでも俺に命令してくる。
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