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バイト帰りの暗い夜道。何となく感じる視線に、俺は何度も振り返る。
が、特に誰かがいる気配は無い。
「なんなんだよも~・・・」
困惑した独り言は夜の住宅街の静けさに吸い込まれていく。
ここ2週間ほど、ずっとこんな事が続いている。
奏汰に尻の穴を開発しろと言って家に連れ込んだ翌日くらいからだ。
俺はなぜか、昔からものすごくモテた。だからおおかたの予想はついている。大学が一緒の女だとか、バイト先のジムに通って来てる女だとかその辺りなんだろう。
どうせなら声を掛けてくれた方が幾分かマシだ。ただ監視されてるだけなのは本っ当に対処のしようがないから。
憂鬱になりながらも帰宅し家の鍵を開けて入ろうとしたその時
「蓮く~ん!」
呑気な大声をあげて向かいの家から駆け寄って来る幼なじみの弟。
振り返ってその顔を見ると、間の抜けたようなへらっとした笑顔で、さっきまでの憂鬱は何だったのかと思わされる。
「お前、まさか俺が歩いて来たの見てた?」
「え? ううん。ほら、うちのリビングから蓮くんちのライトついたの見えたから」
「ああ・・・」
家の前の感知式のライトがついたのを見たのか。じゃあやっぱり誰かが・・・
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