蓮くんは僕が護る

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渋々承諾した蓮くんはスウェットパンツを履いて、ぎこちない動きでラグマットの上に座りローテーブルの上のタブレットPCを起動させる。 「このまま過ごすだけなら課題やるわ。お前も宿題あんだろ受験生」 「うん」 僕は蓮くんの向かいに座り、持ってきていた教科書とノートをバッグから取り出す。 「おっ、その教科書懐かしー」 「蓮くん使ってたのと一緒なの?」 「おー。一緒一緒」 なーんて平静を装った会話をしてても、僕は脳内で、いつ目の前の餌に飛びついてもおかしくない飢えた獣と戦っていた。 齧り付いてしまったら、ひと口ふた口じゃきっと満たされない。骨の髄まで残さず貪り尽くしたくなるに違いない。 その頃、美味そうな餌に見える蓮くんも尻に違和感があるのを必死に堪えながら、なんでもない振りをしていた。 『ミイラ取りがミイラになる』とはこの事か。 蓮くんを脅かす相手から護りたいと近付き過ぎて、いつの間にか蓮くんにとって一番危険な存在になってしまっていたんだ、僕はきっと。
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