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大学の帰り、夕飯を作ってくれるおばちゃんの厚意に甘えて、自宅ではなく中谷家のほうへと足を進める。
「こんにちは」
インターホンを鳴らそうと伸ばした手を掴まれ振り返ると、奏汰と同じ学ランを着たイケメン君と目が合う。
え、誰・・・? 奏汰の友だち?
「あなたですよね? 中谷が変わった原因」
爽やかな笑顔なのに、瞳だけはどことなく昏い印象。
「変わったって、見た目のこと?」
「白々しいな。ここであんたと中谷の関係、大声で話してもいいの?」
俺と、奏汰の関係・・・
まさか、嫌がらせしてたのは、コイツ?
「あんたの家に、俺も招いてくれるよね?」
「は・・・?」
何言ってんのこのガキ。
掴まれた腕を咄嗟に引こうとしたけどビクともしない。
「中谷の母親に、息子が男に入れ込んでますよって、教えてやってもいいんだけど」
そう言われて俺は唾を飲み込む。
だめだ。それだけは。
「言っとくけど知らねー奴に出す茶なんかないぞ」
「聞き分けはいいんだ? もっと手こずるかと思ったけど」
中谷家に背を向け歩き出すと、奏汰の友だちらしき男は俺の腕をようやく離す。
聞き分けがいいとかじゃない。面倒臭いのが嫌なだけだ。
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