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「それは無理やり、あの患者さんが俺の事出てけって言ったんだろ? だから、俺がここにいるのは別にいいんじゃねぇのか?」
「あ、ああ……まぁ、確かにそうだけどさ……。 ま、とりあえず、部屋に戻ろうぜ……」
とりあえず、望は和也には桜井に告白された事を相談せずに部屋へと向けて歩き始める。
望は部屋に戻ってからは溜まっていた資料やカルテの仕事を1人済ませると望は気分転換とばかりにフラリと部屋を出て行く。 そして、屋上へと足を向けた。
春になったばかりの夕方は白衣とシャツ1枚では少しばかり寒いと感じる。
もう1枚羽織る物でも持ってくれば良かったと後悔している望。
「やっぱ、夕方は寒かったか……」
そう1人屋上で呟いても誰1人ここにはいない。
体を少し震わせながらも屋上を囲むようにしてあるフェンスの向こう側を眺める。
少し遠くに見えるビルとビルの合間には夕日が見えていた。
今日一日の仕事を終え夕日はその合間を沈んでいく。
どうして、夕日というのはこう切なくも悲しくも見えてしまうのであろうか?
夕日を見ながら徐に望はポケットに潜ませていたタバコへと火を付ける。
普段、望は煙草を常備している訳ではない。 だけど、たまにこうして煙草を吸いたくなる時には隠れてでもないのだけど、こう屋上へと来ては吸っていた。 そして、煙と同時にため息も漏らす。
「男から告白されるなんて思ってなかったぜ……」
そう1人呟いていると急に屋上に繋がる扉が開かれる。
ここの屋上は安全の為に職員と職員と患者さんなら来てもいい所でもあるのだが夕方のこの時間にこの場所に来る人なんかほぼいない状態の場所だ。
それとも、誰かの見舞客が迷ってここに来たのであろうか?
望はその開けられた扉を凝視する。
それは、警戒しているからだ。
その直後、聞き慣れた声が聴こえてきた。
「望〜……。 やっぱ、ここに居たんだ……」
望の名前を言ったのは和也だ。
和也は望の事を見つけると笑顔で駆け寄ってくる。
「俺の思った通り……ここにいたんだな……」
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