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「なぁ、和也がもし男に告白されたらどうするんだ?」
望は和也の気持ちは全くもって知らないのであろう。 そんな事を何も考えずに聞いてくる。
「え? あ……あ、うん……そうだな……?」
少し和也は考えると、
「好きになってくれたら……やっぱ、男も女も関係ない……かな?」
そう和也は答えるものの、内心ではきっと穏やかではない。 こうやって、素で答えられている自分が今にもおかしくなりそうになっているだろう。
だけど、和也は望に告白をしていないのだから望が和也の気持ちを知る由もなく、望のその相談について答えなければならない。
「そっか……和也はそう思ってるんだ……。 なら、付き合ってみようかな?」
「……へ?」
その望の言葉に一瞬望の事を見上げた和也。 そして、
「え? あ、ちょ、ちょっと待ってよ!」
と和也は急に大きな声を上げる。 そして、望の方へと体を向けると望の肩へと手をかけ、
「ちょ、ちょっと、待ってよ! あのさ、お前がまだアイツの事好きになったっていう訳じゃねぇんだろ? だ、だったら、まだ付き合わなくてもいいんじゃねぇのか?」
「でも、お前言ってくれただろ? 告られたら、男も女も関係ないって……。 それに、今は俺……アイツの事嫌いじゃねぇしな……」
「え? あ、う、うん……確かにそうは言ったんだけどさ……」
これ以上、望の事を言葉で止める事は出来なくなってしまった和也。 だからなのか和也は望の肩に置いてある手に力を込める事しか出来ない。
「あ、あのさ、望……一つだけ聞いていいか? 望は本当に今アイツの事が好きなのか?」
和也の手に更に力が篭ってしまっているのだから、流石の望も痛いのであろう。
「ちょ、痛ぇって!」
流石の望も痛さで顔を歪める。
「あ、ちょ、ゴメン……」
和也は今の望の言葉で肩に力を入れるのを緩めたものの未だに望の肩を掴んでいた。
この手をこのまま離してしまえば、望がもう本当に桜井の所に行ってしまいそうで和也の方はその掴んでいる望の肩を離す事がなかなか出来ない。
「た、確かに今はまだそんな気持ちにはなってねぇよ……。 でも! もし付き合ってみたら、好きになるかもしれねぇじゃねぇか……」
「じゃ、もし、付き合ってみてアイツの事を好きにならなかったら!? アイツの事、傷付けるだけになるんじゃねぇのか?」
「でも! 傷付けるかもしれねぇし、傷付けないかもしれねぇし……そこの所は分からない所だろ?」
その望の言葉で、和也は諦めたのか軽く息を吐きながら掴んでいた手を離すとベンチの方に腰を下ろす。
和也はそのまま深刻そうな表情をしながら頭を項垂れている。
和也は何か考えているのであろうか?
項垂れながらも頭を必死に掻いてみたり、百面相のように表情を変えていた。
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