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「こちら、できたての大福です! お土産にいかがでしょうか!」
駅のホームを歩いていた紗栄は、ふと聞こえた声に足を止めた。視線の先には小さな売店があり、若い女性の店員が、和菓子の並んだショーケースの前で呼び込みをしている。
琥珀たちに買って帰ろうかな。
草津神社の社務所で待っているであろう、みんなの姿を思い浮かべて、ショーケースへ近寄る。
紗栄はゴールデンウィークに入ってすぐ、実家に帰省していた。四日間、実家で両親とゆっくりして、これから草津神社へ戻るところだ。
ショーケースには饅頭や三色団子、カップに入ったあんみつ、そしていちご大福が並んでいる。
今は五月の頭。もういちごの旬は終わってしまうし、最後にみんなで食べるのもいいかもしれない。
「すみません、いちご大福を四つください」
琥珀と鐵、ヒサギ、自分の分を買って、ちらりと腕時計を見る。乗る予定の電車が出るのは、三十分後だ。
紗栄はポケットからスマートフォンを取り出して、少し悩んでから、草津神社に電話をかけた。
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