1人が本棚に入れています
本棚に追加
別れの時期
僕の名は明石庚。高校三年生だ。
夏に部活を引退してから大学に向けて受験勉強をしている。
模試・復習、模試・復習、模試・復習の毎日だ。
そして気づけば早いもので季節は冬になり12月だ。雪もちらつき、寒い日が続く。
受験勉強もラストスパートになったということだ。
「はぁ、受験勉強面倒くさいわ」
僕の彼女、佐野由美が退屈そうに言った。
同じ部活動出身で彼女と仲良くなり高二から付き合うことになった。彼女は成績は中の上だ。
「けど貴方と一緒の大学に行きたい」
「それは僕もだよ」
僕はあまり勉強は得意な方でなく、中の中である。
「なんで受験なんてあるのかしら。面倒ね」
「そういうものだから仕方ないだろ」
「大学も進級があれば良いのに」
「推薦があるだけマシだ」
「あーあ、だるーい」
「将来は警察官目指すのか?」
「うん。夢は変わらないわ」
「……あのさ、ご両親はやっぱり他県の大学進学は反対なのか?」
「ええ。そうね」
「そうか」
「女だから、県外には出さないって、時代錯誤もいいことよ」
「親御さんとしては由美のことが心配なんだよ」
「……まぁ、ね」
「僕も君と同じ大学に行けるように頑張るよ」
「ちょっと模試の成績が良くないもんね」
「あぁ」
「しっかり地元の国立大学に受かろうね」
「おう」
彼女の言葉を励みにして勉強に勤しんだ。
1月1日。センター試験が近づく中、僕達は地元の神社に向かった。
「明けましておめでとう」
「おめでとう」
「はぁ、あっという間ね」
「そうだな」
「ここは合格もokらしいわ」
「本当か?」
「ふふ、さぁね」
「ま、後は祈るぐらいしかすることないか」
「もう今までの勉強が大事だもんね」
「いや、残りの時間の勉強も大事だ」
「ふふっ、センター試験まで後2週間ぐらいだから気を引きしめないと」
「あぁ」
僕達は祈願をした。一緒に同じ大学に合格するために。
そしてセンター試験当日。
一日目は文系、そして二日目は理系科目だった。
はぁ、余り上手くいかなかったな。由美はどうだろうか。上手くいったかな?
そしてセンターの自己採点を行い、案の定僕は芳しくない点数を取ってしまい、担任と話し合い、由美は地元の大学、僕は他県の大学に行くことになった。
そして2月下旬。それぞれの志願した大学の二次試験を受けて卒業式を迎える。
「この思い出の高校ともお別れね」
「あぁ」
「後は通知結果を待つのみになったわ」
「そうだな」
僕達は黙った。次に言う言葉をお互いに探り合っている感じだ。
「あのさ」
「あの」
同時に言った。
気まずいな……。
「……これから私達どうする?」
来た。
「そうだな。けどそれは通知結果を見てからに決めないか?」
「……そうね。分かったわ」
残された彼女といる時間を大切にするために。
そしてそれぞれ志願した大学の通知が送られてきて合格し、僕達はそれぞれの道を歩むべく、別れた。
最初のコメントを投稿しよう!