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どうやら俺は、死んだらしい。
***
中有には、さまざまな魂が行き交う。
輪廻転生の輪から逃れられなかった魂が、何度もなんども繰り返し通過して往く。
どの生有を授けられ、どんな本有を過ごしたとしても、輪廻転生の輪に在る魂は等しく死有を迎え、再び中有に還ってくる。
中有には、そこに使役する魂も在る。
彼らは皆、厳正な役割を与えられている。
罪を戒め、労わり、次の生有を与えることで、魂を輪廻させているのだ。
***
「と、いうわけで」
何が「わけ」なのかまったく説明しないまま、無邪気な笑顔と共に右手を差し出された。
殺風景な灰色の荒野に佇む、和風メイド服の女の子に。
「メイド案内人のヒロノだ。 よろしく」
勢いよく突き出された右手を、砂地に座り込んだまま反射的に握る。
白くて柔らかいキレイな手だな……と思いながら視線を移すと、彼女の手を握る自分の手はもっと白かった。
いや、白いのは我が手ではなく、手の甲から手首に掛けて巻かれた布だ。
「なんだ、これ?」
少女の手を握ったまま自分の右手をまじまじと見つめ、それから自分の体を見た。
「なんじゃこりゃあ!」
見慣れない自分の服装に驚いて、勢いよく立ち上がる。
真っ白な……着物?
よく見れば、手の甲だけでなく脛にも白い布を巻いている。
足にはわらじ、傍らには装飾のない木の杖。
背中の違和感を辿れば、実物は初めてなのに妙に懐かしさを感じる編み笠。
この傘は教科書で見たことがある……確か、小学校で習ったやつ。
かさこじぞうだったか。
肩から下げた白い袋の中を覗けば……
「六文銭」
ということは、これは。
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