2話「ジャズ研」

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 ニタっと笑んだ七海の口元に真っ白な歯が覗いた。軽く弾みをつけながら坂を登り、少し背の高い奏の顔を覗き込む。 「一緒に入って欲しそうな顔」  七海の悪戯な表情に一瞬だけ臆して、負けじと奏は喉を震わせた。 「うん。二人と一緒に演奏したい。ジャズ研、入ってみない?」  キラキラとした青い空が奏と重なる。遠くまで伸びる飛行機雲。夏を待ちわびる若い緑の梢枝たちがカサカサと静寂にリズムを添えた。ぐっと力の込められた奏の薄い唇はほんのりと白くなっている。  きっと七海も同じ気持ちのはずだ。奏と一緒に演奏がしてみたい。みなこと七海は同時に頷き、声がユニゾンする。 「いいよ」
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