3話「鶯の森」

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 坂の上側にいる航平の背はみなこよりも随分高い。中学の時よりも伸びているかもしれない。最後にクラスが同じになったのは小学校五年生の時だっただろうか。親同士の仲が良く、幼稚園に入る前から知っている幼馴染だが、思春期の頃になってからどうも話すのが恥ずかしい。異性として好きだとか嫌いだとかそういう感情ではない。ただ無性に気まずいのだ。それを感じているのはみなこの一方的なものかもしれないが。  その気まずさはみなこの言葉に棘を生やす。 「どう見たってそうやろ」 「高校生なんやから、寄り道したって怒られはせんのに素直に帰って来て」  入学式初日から、同級生を誘い遊びに出る勇気はみなこにはない。気の合いそうな友人を見つけた子たちは、梅田に出ようやら西宮に買い物に行こうやらと話ているところを聞いたが。 「そうかもしらんけど……航平やって素直に帰って来てるやん」 「俺は真面目やし?」 「どの口が言ってんの」
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