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「ほら、おかんが! みなこがギター買ったって話をお前んとこの親から聞いたって聞いて」
「ふーん」
どこか慌てた様子の航平は、みなこから視線をそらした。同時に彼のスマートフォンが鳴る。スラックスのポケットから、入学祝いにでも買って貰ったであろう真新しいスマートフォンが出てきた。そういえば、みなこは航平の連絡先を知らない。
「あー、おかんに買いもん頼まれたわ。ほんならな」
面倒くさい、と顔に出ているが素直に従うところは彼のいいところなのか、それとも反抗期を越えて大人になったからなのか。航平は少しだけ早足で長い坂を登って行った。
「ちょー、もうー、航平もジャズ研ってなんなん」
「あれ、みなこは嬉しんちゃうん?」
「なんで私が嬉しがらなあかんの?」
不思議そうな顔を見合わせ、お互いに首を傾ける。坂の傾斜が垂直に見えた。
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