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1話「軽音部がない」
見慣れない校舎は、着慣れない制服を着た生徒たちのぎこちない緊張感で満たされていた。この辺りでは可愛いともっぱら評判の紺色のブレザーは男女共通。チェック柄のスカートとスラックスは、わずかに女子の生足の方が目立っている。真新しい制服に身を包んだ生徒たちの間を抜けていく心地よい春の風を胸いっぱいに吸い込み、清瀬みなこは新しい生活への期待と不安を同時に膨らませた。
入学式を終えて、ぞろぞろと教室へ戻る人の波は、皆同じような雰囲気だ。自分たちはもう子どもではない、とはしゃぎ過ぎないよう周りを警戒しながらも、友人作りのチャンスを逃さないように機会を伺っている。つい先日まで中学生だった同級生たちの気がこうして引き締まっているのは、PTA会長のやる気のある祝辞を聞いたせいだろうか? どことなく大人っぽく見える皆に負けないようにと、みなこは小さな胸を張ってみた。
「みーなこ」
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