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元気のいい弾んだ声に呼ばれたかと思えば、肩に絡みつくように腕が伸びてきた。その腕が大西七海のものだとすぐに分かる。短い髪の毛先はピンとハネていて、みなこの鼻をくすぐった。それが寝癖ではないことをみなこは知っている。
「七海ってば、暑いしひっつかんといて」
「ケチー」
「ほら、みんながこっち見てるやんか」
入学早々、スキンシップを取っていることが珍しいのだろう。廊下を行く生徒の目が一斉にこちらを向いた。七海は気にしないらしいが、みなこは少し照れくさく周りの目も気になる。
「ええやんかー、中学の時はなんも言わんかったくせに」
「もう高校生やから」
七海は、みなこと同じ小中学校出身で、小さいころからずっと仲が良く毎日のように遊んでいた。つまり親友だ。友達作りに自信のなかったみなこは、七海と同じクラスで安心したのだが、彼女は少々積極的すぎる。周りを気にせずにすぐに行動に移すタイプなのだ。それが吉と出ることもあるが、危うい場面も何度かみなこは知っている。
「高校生になったらなんで抱きついたらあかんの?」
「恥ずかしいし……それに」
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