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奏が浮かない顔をしているのは杏奈のことだろう。せっかく相談をしてくれたのに不甲斐ない。めぐと七海のそばでニコニコはしているが、その表情の奥にある曇りのようなものをみなこは感じざるを得なかった。
「みなこはこれとか似合うんちゃう?」
そう言って佳奈に手渡された水着は、かなり際どいデザインのものだった。本気か冗談か、佳奈の顔を見てみるがどっちか分からない。「ちょっと恥ずかしいかなー」と言うと、
「おませさんには、これくらいがええんかなって思った」と佳奈は口端を釣り上げた。
どうも合宿の時と同じで航平とのことを言っているらしい。冗談だと分かり、みなこは水着を佳奈に突き返す。
「それなら佳奈が着ればええやん」
「似合うかな?」
「似合うんじゃない? スタイルもええし」
水着を身体に当てて、「うーん」と佳奈が喉を鳴らす。似合うと言ったのは嘘ではないけど、真に受けられては困る。
「試しに着てみようかな」
「え、本気でそれにするん?」
「駄目?」
「駄目ちゃうけど」
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