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そう言って、奏は自分の胸の辺りに手を当てた。佳奈との差は歴然だ。奏だって小さいわけじゃないけど。
「そんなこと言ってー、試着くらいしてみたらー?」
悪戯に口端を釣り上げためぐに、奏がぷくっとほっぺを膨れさせる。
「もう! 私は自分で選ぶから!」
めぐからそっぽを向いて、奏は水着を漁りだす。やりすぎたかな、と言いたげにめぐは眦を下げたが、奏の表情は明るかった。ようやく元気が戻って来たらしい。こうやってみんなで遊んでいる時くらい気を紛らわせてくれたら。一時的なもので何も解決にはならないだろうけど。
さて自分も水着を探そうかな、と辺りを物色し始めると、どこからか自分を呼ぶ声が聞こえてきた。試着室から顔を覗かせた佳奈が、恥ずかしそうにこちらを手招いている。
それに近づき、みなこは首を傾げた。
「何で隠れてるん?」
「だって恥ずかしいやん」
思えば、合宿の時もこれに近しいやり取りがあった気がする。威勢は良いくせに、最後は恥ずかしがる。佳奈はそういうタイプだ。
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