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「困ってるなら解決してあげたい! 奏に聞いてみようかな?」
「だめ!」
つい言葉が強くなってしまう。それは七海の性格を知っているからだ。後先を考えずに突き進む七海はこういう問題に首を突っ込むべきじゃない。事態を悪化させてしまうことは容易に想像がつく。少なくとも杏奈の話も聴いてしまっている以上、この問題は上級生にも関わってくるものなのだ。大事にはしたくない。それは春先から一貫しているみなこの考えだった。
だけど、善意である七海の発言を否定してしまったことは、正しい行いだったんだろうか。瞬時に襲ってきた後悔に、みなこの作り笑いはとても硬いものになった。
「ほら、間違ってたら奏ちゃんも気を悪くするんちゃうかなって」
「まぁそうかもしれんけど」
七海は不服そうに唇を尖らせる。奏を心配する気持ちは痛いくらいに分かる。けど、七海は大人しくしていて、と心の中で呟いた。少しだけひどい気もしたが、きっと七海には別のアプローチがあるはずなのだ。今のみなこには、それがどんなことなのか分からないけど。
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