8話「水着」

8/12
前へ
/1504ページ
次へ
 少しだけ考えて、「うちの気のせいかな」と渋々納得したようで、くるっと踵を返し正面を向いた。それからすぐ七海が声を上げる。 「あれ、奇遇ですね!」  蛇行する列の折返しのところで、見知った顔と鉢合わせた。 「あれ、清瀬ちゃんやんー」  明るく声を出し、杏奈が手を広げる。その隣では、里帆が驚いた表情を浮かべていた。まさかこんなところで会うなんて、という反応だ。みなこたちは少しだけ遠出をして来たが、もしかすると二人は地元なのかもしれない。 「おはようございます」 「清瀬ちゃんは真面目やなー」  はは、っと笑みを浮かべる杏奈に対し、「おはよう」と里帆が返してくれた。偶然、会った先輩に七海のテンションがぐっと上がる。 「どうしてここにいるんですか!」 「良い質問だね! 今日はせっかくの休みだから洋服を買いに来たのです!」 「おぉ!」  手を打つ七海に、里帆が呆れた様子で頬をかく。杏奈は七海のリアクションにケラケラと声を出した。 「先輩方もお昼ですか?」 「うん。美味しそうなお肉の香りに里帆がやられて」 「私ちゃうやろ」
/1504ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加