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少しだけ考えて、「うちの気のせいかな」と渋々納得したようで、くるっと踵を返し正面を向いた。それからすぐ七海が声を上げる。
「あれ、奇遇ですね!」
蛇行する列の折返しのところで、見知った顔と鉢合わせた。
「あれ、清瀬ちゃんやんー」
明るく声を出し、杏奈が手を広げる。その隣では、里帆が驚いた表情を浮かべていた。まさかこんなところで会うなんて、という反応だ。みなこたちは少しだけ遠出をして来たが、もしかすると二人は地元なのかもしれない。
「おはようございます」
「清瀬ちゃんは真面目やなー」
はは、っと笑みを浮かべる杏奈に対し、「おはよう」と里帆が返してくれた。偶然、会った先輩に七海のテンションがぐっと上がる。
「どうしてここにいるんですか!」
「良い質問だね! 今日はせっかくの休みだから洋服を買いに来たのです!」
「おぉ!」
手を打つ七海に、里帆が呆れた様子で頬をかく。杏奈は七海のリアクションにケラケラと声を出した。
「先輩方もお昼ですか?」
「うん。美味しそうなお肉の香りに里帆がやられて」
「私ちゃうやろ」
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