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「そういうつもりはなかったんやけど。谷川ちゃんがそう感じていたなら、私が最低やってことやな。……本当に冷たくするとか、無視してたとかじゃないよ。それに、教えられることはちゃんとしてたつもり。指導で手を抜いたことはないし、伝えられることを出し惜しみしたこともない。他の子と変わらんように接していたつもりではいる。これは本当。でもな……」
言葉を詰まらせて、杏奈の足がパタンと絨毯の上に落ちた。膝の上に置いた手は、少しだけ振るえているように見えた。
「来年なったらおらんようになる先輩と仲良くなっても寂しくなるだけやん。谷川ちゃんはとっても良い子やから、そういう顔はみたくなかってん」
それは杏奈の本音で、彼女なりの優しさだろう。けど、奏は本当にそれを望んでいるのだろうか。少なくとも、今の自分は奏の相談を受けてここにいるのだ。
「奏ちゃんは杏奈先輩と仲良くしたいと思っているはずです」
「けど、私はもう来月には部活を辞める。それやのに仲良くするなんて可愛そうや」
「どうしても辞めるんですか?」
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