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「うん。続けたって見窄らしいだけや。それに文化祭でトロンボーンをやれるなら。私はそれに憧れてこの学校に来たんやし。本望やで」
辞めないでください。そんな風に説得する権利は自分にはないように思えた。原因が奏とのことにあるなら、それは誤解と言えた。だけど、根本的な問題は別にあったのだ。杏奈と桃菜の関係について、自分に出来ることはなにもない。間接的に奏と関わっていたとしても、奏の為に居たくもない場所に居続けて欲しいなんて頼めるわけがない。
「桃菜とは性格も合わんかってん。あの子は静かやろ? けど、あー見えて芯はしっかりしてて意見を持ってる。私は明るいくせに芯がなくて……、それに実力も。まったく釣り合ってないやろ」
自嘲気味にそう言って、杏奈は弾みをつけて立ち上がった。キラキラとした陽光を浴びて、身体をグッと伸ばす。制服の裾から白い肌が見えた。
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