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「うん。係の子に、衣装が出来たから着てみてって言われて試着してた」
何もその格好で出歩かなくても。そんな目をしていたらしいみなこに向かって、佳奈が言い訳のように言葉を続けた。
「今から教室で練習するから。衣装の方がぽさが出るやろ?」
「まあ、そうかもなあ」
不服そうにしながら、佳奈がフードを脱ぐ。
「佳奈ちゃんが舞台に出るなら観に行かなくちゃ! 順番はいつだっけ?」
「一日目の一六時やったはず」
「ほんなら、私らの組の前やん」
「みなこたちのところも演劇なん?」
「そうやで。私らは舞台には出んから、客席で鑑賞するけど」
ふーん、と佳奈が喉を鳴らす。少しホッとしているのは、直後だと準備があって劇が観てもらえないと思ったのかもしれない。
「てか、佳奈って役者するんやな」
「私が役者したらあかん?」
「うーん。ぽくはないかな」
春先の航平の話しだとクラスでも距離をおかれているようなことを言っていたが、時間の経過と共にしっかり馴染めているらしい。喜ばしいことだが、少しだけ胸がモヤモヤするのは妙な嫉妬心だろうか。顕にするとからかわれそうなので、密かに隠しておく。
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