2話「夏の坂道」

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 航平の赤色のスニーカーが、コンクリートの隙間から生えた雑草を踏みしめる。彼が近づくに連れ、みなこの視線はゆっくりと上がっていく。みなこの横を通り過ぎる頃には、その角度はさらに急なものとなった。  航平の背中が小高い山越しに沈んでいく夕焼けに重なる。街路樹の梢から漏れる光の筋が、彼の背中をキラキラと輝かせた。うるさい蝉の鳴き声の中に、彼の柔らかい声が混じる。 「夏休みも終わりやなあ」 「うん」 「宿題は終わったん?」 「七海じゃないんやから。ちゃんと終わらせてますよ」 「へー」 「航平こそ終わってんの?」 「英語がまだ少しだけ残ってるけど、まあ明日には終わらせれると思う」  ガードレールで車道と仕切られた狭い歩道は、二人並んで歩くには少々狭い。手でも繋ぐか、腕を組めば歩けるかもしれないけど。一瞬、過ぎった想像をかき消そうと、みなこは首をブルブルと左右に振る。 「なぁ、みなこ」 「なに?」 「なんか悩んでる?」 「なんで?」
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