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航平の赤色のスニーカーが、コンクリートの隙間から生えた雑草を踏みしめる。彼が近づくに連れ、みなこの視線はゆっくりと上がっていく。みなこの横を通り過ぎる頃には、その角度はさらに急なものとなった。
航平の背中が小高い山越しに沈んでいく夕焼けに重なる。街路樹の梢から漏れる光の筋が、彼の背中をキラキラと輝かせた。うるさい蝉の鳴き声の中に、彼の柔らかい声が混じる。
「夏休みも終わりやなあ」
「うん」
「宿題は終わったん?」
「七海じゃないんやから。ちゃんと終わらせてますよ」
「へー」
「航平こそ終わってんの?」
「英語がまだ少しだけ残ってるけど、まあ明日には終わらせれると思う」
ガードレールで車道と仕切られた狭い歩道は、二人並んで歩くには少々狭い。手でも繋ぐか、腕を組めば歩けるかもしれないけど。一瞬、過ぎった想像をかき消そうと、みなこは首をブルブルと左右に振る。
「なぁ、みなこ」
「なに?」
「なんか悩んでる?」
「なんで?」
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