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航平には不思議と話せてしまう。それはきっと幼馴染だからだ。そんな言い訳を心の中で唱え、みなこは杏奈の退部のこと、そのせいで奏が悩んでしまっている現状を話した。
*
「なるほどな」
うねうねと蛇行している道の左右には土砂崩れを防ぐための擁壁がそびえていた。自然の威厳の中に吸い込まれそうになる感覚。幼い頃からこの景色が苦手だったみなこだが、航平と共に歩いているせいか不思議と平気だった。
「それで、みなこはどうしたいん?」
「どうしたいって……それがよくわかんなくて」
うーん、と喉を鳴らした航平は、徐々に藍色に染まっていく空を見上げた。数匹のコウモリが森から森へと渡っていく。鼓膜を揺すっているのは、山の中から響くひぐらしの鳴き声だ。
「こう言っちゃ悪いけどさ。みなこには関係のない話やん。そもそも二年生二人の問題なんやろ?」
「そうやけど」
航平の言いたいことはちゃんと理解している。やっぱりこれは、あの二人の問題なのだ。奏ならまだしも少なくとも自分が首を突っ込むべきではない。だけど、それなら里帆はどうして自分に話を振って来たのだろう。
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