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てっきり奏と杏奈の問題だからだと思っていたけど。ただ単純に、話を聞かれたからだろうか。
「けど、悩んでるってことは、みなことしては納得できないことがあると」
「多分そう。奏ちゃんが傷つくんじゃないかって。杏奈先輩にやめて欲しくないはずやから」
「なるほどなぁ」
地面に転がっていた蝉の抜け殻が、航平のスニーカーに踏まれてくしゃりと潰れる。勾配が終わり、住宅街が見えてきた。
「やったら、そうならんように動くしかないんちゃう?」
「そうならんようにって……?」
「みなこは谷川に傷ついて欲しくないんやろ?」
「うん」
「このままじっとしてても事態は好転せえへんやん。谷川が傷つかんように、みなこが働きかけるしかないと思うで」
確かに放っておけば、来月には杏奈は部活を辞める。そうなれば、奏はきっと嫌な思いをするはずだ。その原因が自分でなかったとしても、直属の先輩が部活を去ることに対して何の感情も抱かない子ではない。
「けど、この件は私に関係のない問題やって言ったやん?」
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