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「二人の関係に口は出すべきではないと思うけど、そのせいで悩んでる人がいるなら話は別。谷川を守るために動くことは悪いことじゃないはず。もしなんか揉めるようなことがあったら、俺はみなこの味方してあげるから」
「航平が味方してくれたって、どうにかなるわけじゃないやろ」
「そうかもしれんけどさ」
鼻から吸い込んだ夏の空気は、どうしてかほんの少しだけ甘酸っぱく、思わず口元が緩んでしまった。
「それにさ。俺らはまだ一年生やん」
「うーん?」
「子どもっぽくわがままに行動してもバチは当たらんと思うで。みなこはいっつも慎重過ぎ。そのへんは大西を見習わな」
「そんなもんなんかな」
「そういう振る舞いが出来んのは、今のうちだけやろ。先輩に甘えて見るのも悪くないんじゃないかって話」
なんとなく航平の言いたいことも分かる。自分の中に大人を作って論理的に立ち振る舞うよりも、七海のように真っ直ぐぶつかることがいいことだってあるはず。きっと、今の自分達の年代では、そのうまいバランスを求められている気がした。
「ありがと」
素直にお礼を言うのが恥ずかしく、遠い夕焼けに向かってみなこは呟いた。
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