3話「無関心」

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 奏がウッドベースでビッグバンドに参加するようになったのは合宿明けから。個人練習の合間を縫ってずっと行っていた練習がようやく身を結んだ。アドリブの練習と平行しなくてはいけない中、たった三ヶ月ほどで人前に出られると判断される腕前まで持っていくのはかなりの努力があったに違いない。一般的に、ウッドベースからエレキベースへの持ち替えよりも困難だとされているのだ。  曲の終盤は、しっとりとしたテンポでメロディアスな雰囲気に包まれる。みちるの優しいサックスのサウンドが奏のウッドベースに寄り添う。穏やかな風が空にかかった灰色の雲を払いのけるようにさらに知子のピアノが加わる。溢れ出すキラキラとした陽射しが濡れた花弁を煌めかせた。それから息をするまもなく始まる、穏やかなサックスとトロンボーンの掛け合い。演奏するのは、もちろん佳奈と桃菜だ。
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