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最後の盛り上がりに向けて、二人の掛け合いはヒートアップしていく。アドリブの応酬。彼女たちには、どれだけのレパートリーがあるのだろうか。演奏のたびに違った景色が見える。ギターのカッティングのリズムが狂ってしまうそうになるほど、みなこは毎回二人の演奏に聞き惚れてしまう。
「なかなか良くなってきてるよ。他の曲のクオリティーも上がってきてるし、文化祭は問題なさそうやね」
満足気にみちるが鼻からふんと息を吐き出す。首元のストラップからサックスを外し、緩んだ表情のまま片付けを始めた。気が付かない間にもう下校時間だ。窓のないスタジオは外の景色が分からず、集中していると時間があっという間に過ぎてしまう。
「今日はこのくらいやな。それじゃ、明日は夏休み最後の練習です。セッションは昼からを予定していますが、クラスの出し物の手伝いとかの予定はありますか?」
知子の問いかけに里帆が手を上げ答える。
「二時までクラスの準備手伝わんと駄目みたいで」
「あ、俺もです」
里帆の言葉に大樹が同調した。彼が片付けている古びたトロンボーンは学校の備品だ。目を細めた里帆が彼の方をちらりと見遣る。
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