3話「無関心」

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 だが、自分は桃菜とどんな話をすればいいのだろうか。そもそも二人のわだかまりは自分に解決できる問題なのか? 子どもの喧嘩だというなら、双方が謝れば万事解決する。けど、これは杏奈のプライドの問題なのだ。桃菜に奪われたポジション、それから文化祭という彼女にとって特別な舞台の存在。これらをなかったことには出来ない。  ――桃菜が杏奈にトロンボーンのパートを譲る。そんな幼稚な解決策が脳裏をかすめた。そんなわけにはいかないことくらい分かっている。コンボは完全に実力主義なのだ。その提案がどれだけ屈辱的な思いをさせるのか、想像するだけで吐き気がする。  そもそも桃菜は自分のせいで、杏奈が退部してしまうことを知っているのだろうか。お互い好意的に思っていないと杏奈は言っていたが、いくら嫌いな相手だとしても、同級生が退部することに無関心でいれるものだろうか。  もし、この春先の関係のまま佳奈が退部すると言い出したら、自分はどういう気持ちになったのだろう。微妙な距離感の同級生の退部……。難解な想像の答えは、少なくとも無関心ではなかった。
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