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4話「目配せ」
続々と部員たちが部室をあとにする中、みなこは桃菜に声をかけようとしていた。しかし、桃菜のそばには常に美帆がいて話しかけづらい。ギターの手入れをするフリをして、一人になるタイミングはないかとじっと機会を伺う。
「みなこ、帰ろうや」
「う、うん……」
ギターを抱えて丸椅子に座っていたみなこの背中越しから、七海が顔を覗かせた。スクールバックを肩にかけて、唇をつんと尖らせている。
「弦でも張り替えんの?」
「そういうわけじゃないけど」
美帆は彼氏であるらしい健太と帰るはずだから、しばらくすれば桃菜は一人きりになると踏んでいたけど、なかなか思うようにはいかない。何も恋人だからと言って、毎日一緒に帰らなければいけない決まりはないのだ。いつの間にか健太は部室からいなくなっていたので、先に帰ったのかもしれない。三年生は受験が迫っていて忙しのかもしれない。
「やったら早く帰ろうや」
廊下にはすでに佳奈やめぐも待ってくれている。これ以上、粘っても桃菜が一人になることはなさそうだ。
「うん。ギター、仕舞うから待って」
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