4話「目配せ」

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「めぐ、ひどっ! うちだって宿題くらいちゃんとやるから!」 「私が手伝ってあげたんやろ。一昨日、泣きついてきたのは誰だったかな……?」 「みなこ、それは内緒やから」  階段の方へ歩を進めようとしたタイミングで、みんなの視線が音楽室の方を向いた。「お疲れ様でした」と一同が頭を下げたのを見て、みなこは振り返る。 「おつかれ」  口端を緩めて手をふる美帆と無言のまま軽く頭を下げる桃菜。二人の手には金色の楽器が握られていた。  二人の姿を見て、みなこも慌てて頭を下げる。てっきり帰ってしまったと思ったけど、準備室に楽器を片付けに向かっていたらしい。ちなみに、吹奏楽部はすでに練習を終えていて、音楽室はシーンと静けさに包まれていた。 「ほら、ぶすっとした顔してたら後輩ちゃんが怖がるやろ! また明日ねー」  美帆は桃菜の手を掴み無理やり手を振らせた。苦笑いを浮かべる一同に対し、手を振り返す七海。桃菜は露骨に不服そうな表情を浮かべながら、操り人の言うことに従っている。 「何してんの?」  準備室から出てきた里帆が呆れた表情で二人を見遣った。
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