4話「目配せ」

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「桃菜が怖い顔するから、かわいい後輩ちゃん達にちゃんと挨拶させてんねん」 「桃菜は嫌がってるんちゃう?」 「嫌がってないやんな?」  ニコッと笑みを浮かべて、美帆は桃菜の頬を片手で掴む。しっかりと固定された美帆の手の中で、桃菜の顔が左右に揺れた。 「ほら、嫌がってるんやん」 「これは桃菜なりの私への愛情表現なんですー」 「そうは見えへんけどー?」  杏奈と桃菜の関係があるとはいえ、里帆と桃菜の間に亀裂はないらしい。里帆の言葉に桃菜はコクリと頷き、「愛情表現ちゃう」と喉を振るえさせる。 「んー。今日は随分反抗的やなー」  肉付きの薄い桃菜の頬を、美帆がぎゅーと抑え込む。うぅ、と桃菜はうねり声を上げた。崩れる桃菜の表情に笑う里帆の視線がチラリとこちらを向いた。 「美帆、今日、健太先輩は?」 「今日は予備校があるからって先に帰ったで」 「そっか。ほんなら頼まれごとしてくれる?」  「なに?」 「小スタに残ってる去年までの楽譜の整理を頼まれてんけどさ、もうすぐ下校時間やろ。一人やと時間かかりそうで」 「なんで私?」 「かわいい後輩ちゃんにやらせるつもり?」
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