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「桃菜が怖い顔するから、かわいい後輩ちゃん達にちゃんと挨拶させてんねん」
「桃菜は嫌がってるんちゃう?」
「嫌がってないやんな?」
ニコッと笑みを浮かべて、美帆は桃菜の頬を片手で掴む。しっかりと固定された美帆の手の中で、桃菜の顔が左右に揺れた。
「ほら、嫌がってるんやん」
「これは桃菜なりの私への愛情表現なんですー」
「そうは見えへんけどー?」
杏奈と桃菜の関係があるとはいえ、里帆と桃菜の間に亀裂はないらしい。里帆の言葉に桃菜はコクリと頷き、「愛情表現ちゃう」と喉を振るえさせる。
「んー。今日は随分反抗的やなー」
肉付きの薄い桃菜の頬を、美帆がぎゅーと抑え込む。うぅ、と桃菜はうねり声を上げた。崩れる桃菜の表情に笑う里帆の視線がチラリとこちらを向いた。
「美帆、今日、健太先輩は?」
「今日は予備校があるからって先に帰ったで」
「そっか。ほんなら頼まれごとしてくれる?」
「なに?」
「小スタに残ってる去年までの楽譜の整理を頼まれてんけどさ、もうすぐ下校時間やろ。一人やと時間かかりそうで」
「なんで私?」
「かわいい後輩ちゃんにやらせるつもり?」
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