4話「目配せ」

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 階段の方から七海の声がして振り返った。みんなはすでに踊り場の方に集まっている。せっかく里帆が作ってくれたチャンス。難しいことは考えずに飛び込もう。もし、失敗したって里帆はカバーをしてくれるつもりのはずだ。彼女はそういう人だ。それに、航平だって味方をしてくれると言ってくれた。その言葉がどうしてか不思議と勇気の後押しになる。 「ごめん、先に帰ってて。ちょっと用事が……」 「またー! 朝、先に行くことも多いしー」  そういえば、この夏はこういうことが多い気がする。里帆や杏奈と話すために、放課後残ったり、七海を置いて先に登校したり……。朝の大半は、七海の寝坊が原因だった気がするけど。  事情を説明することは出来ない。「ごめんな」と謝罪をもう一度口にして、みなこは桃菜がいる準備室へ向かった。
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