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真っ直ぐにこちらを見つめた双眸が細くなっていたのは、夕陽の眩しさのせいだろうか。みなこの背中をじわじわとやけ焦がすような強い陽射しが、準備室を明るく染める。背中はじんわりと汗ばみはじめていた。桃菜が立ち去らないように質問を続けるしかない。
「でも、どうしてジャズ研に入られたんですか?」
「美帆に誘われてん」
「美帆先輩は、昔からジャズが好きやったらしいですもんね」
「里帆と美帆の二人はジャズに詳しい。はじめの頃はよく教わってた」
二つ結びにした髪を撫でながら、桃菜は諦めたように淡々と答えた。暗く人見知りのイメージな彼女だが、質問攻めをしてくる後輩を無視するほどの冷たさは持ち合わせていないらしい。
「お二人は、よく一年生にも教えてくれます」
「お節介やからな」
棘の生えた言い回しだったが、桃菜の表情は穏やかだった。意外とコミュニケーションが取れている。無視されるかも、なんて覚悟していたみなこは少しだけホッとした。
「トロンボーンを選んだのはどうしてなんですか?」
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