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「杏奈先輩は、笠原先輩は天才だって。だから自分が戦っても勝てないから……」
「それが努力をしない言い訳ってこと?」
杏奈の言葉を代弁しているだけのみなこは反論出来ない。言葉はきついけれど、桃菜に非はないし間違ってもいないから。
「……もし、そうなら、私はそういう人嫌い」
吐き捨てられたあまりにも単純な言葉が、杏奈の人間性を強く否定する。
「美帆に誘われてはじめた音楽。自分の中にあるモヤモヤとしたものを音で表現できた。それが気持ちよくて、うまくなりたい、そう思って私は毎日練習をしてきた。その努力を天才っていう言葉で片付けるなら結構。私は私が天才かどうかなんて知らない。でも、それを自分が逃げ出す言い訳にされるのは迷惑」
今更になってこの問題が単純なものだと気がついた。桃菜や奏が絡んでいることで複雑になって見えるだけで、解決できる方法は一つしかなかったのだ。諦めた杏奈の気持ちを再熱させる。桃菜がどう思っているかなんて関係ない。
「里帆もあなたも一体、私に何を望んでるん? 私にどうして欲しん?」
「すみません」
「謝られても困る」
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