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桃菜に悪意がなく、この件の根源でもない以上、桃菜に何かを望むことは出来ない。
「笠原先輩と杏奈先輩、お二人の問題だと思ってたんです」
「そう思ってしまうのは分かった。でも、どうして、あなたがそのことで口を出すん?」
「そのせいで一年生の一人が悩んでて……」
「それで私を説得すれば解決すると」
「はい」
「でも、私にはどうしようもないやろ。トロンボーンを譲るわけにもいかない。鈴木さんに謝ることが解決になるとも思えない」
「私もそう思います」
無駄足だったかもしれない。振り絞った勇気は空振りに終わった。けど、せっかくなら確認しておきたいことがあった。杏奈は自分が嫌われていると思っているけど、本当のところはどうなのか。「そういう人嫌い」と桃菜は言ったけど、あれは具体的に杏奈のことを指したわけじゃない。
「笠原先輩は、杏奈先輩のことどう思ってるんですか?」
「……別になんとも思ってない」
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