6話「優しさとお節介の境目」

4/6

78人が本棚に入れています
本棚に追加
/1504ページ
 だったら、桃菜が奏みたいに杏奈のことを思いやっていれば、こんなことにはならなかったのだろうか。だけど、それはきっと望み過ぎだ。桃菜にとって杏奈が特別な存在ではないのなら、友人以下の相手に、そこまでの優しさをかけるべきだなんて言えない。  結局はやっぱり杏奈自身の問題だ。周りは悪くはないと思う。だったら、杏奈に対して「諦めずに戦い続けなさい」と発破をかけることしかできないじゃないか。 「……杏奈先輩は優しい人だから」 「奏ちゃんの言う通りだと思う。でも、このことで奏ちゃんが責任を感じるんは違う」 「でも、みなこちゃんが笠原先輩とこうして話をしてたのも、私が相談したことが回り回ってでしょ?」 「そうやけど」  だけど、そのことで何か問題が大きくはなったりはしていないのだ。桃菜だって、気に留めている様子はなかったし、状況は好転もしていなければ悪化もしていない。それは航平の言う通りだと言える。だけど、一つだけ想定外なのは目の前の奏だ。 「ということは、みなこちゃんにも迷惑をかけていたんだよね」
/1504ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加