7話「独りよがり」

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7話「独りよがり」

 夏休みが明けて、あっという間に二週間が経過した。文化祭を明日に控え、校舎はすっかりお祭りムードだ。廊下にはたくさんの宣伝ポスターが貼られ、みんな最後の仕上げに急かされている。演劇を行うクラスの垂れ幕が、屋上から吊るされるのが宝塚南の伝統だった。  夏休み明けからしばらくは、短縮授業が継続されている。ジャズ研は昼過ぎから当日の会場である視聴覚室でゲネプロを行っていた。 「出ハケのタイミングもきっちり確認しておいてねー」  みちるがステージの前に立ち、部員たちに指示を送る。まず、曲順とステージ上でのポジションの確認だ。演奏がないタイミングでは、学年に関係なくサポートに回るため、休む時間は少ない。誰がどのタイミングで楽器の運搬を行い、どこに配置するのか、本番でミスのないようにしっかりと一時間分のステージ構成を頭に叩き込む。  ちなみに視聴覚室は、普段並べられている長机が撤去され、お客さんは立見で観覧することが出来るようになっている。チケット制ではなく、出入りは自由なので学校内外から多くの人が来てくれるはずだ。 「みなこちゃん、譜面台の高さはこれでいい?」 「うん。ありがと」
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