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奏が譜面台の高さを調整してくれた。ほっこりとしているはずの笑顔が寂しく見えるのはきっと気のせいじゃない。
桃菜との会話を奏に聞かれてから、話は何も進展していない。杏奈と話さなくちゃいけないと分かっていながら、何も出来ていないのが現状だった。
「奏ちゃんのウッベはこのままでいいんやんな」
「そうだよ。運ぶの大変だしね」
夏休みの最終日に練習を休んだ奏だったが、次の日からしっかりと登校してきている。部活も休みはしていない。あの日は、風邪を引いてしまったということになっているらしい。だけど、それは嘘だとみなこは思っている。
奏はあれから何も素振りを見せない。むしろ以前と何も変わらないフリをしているのだ。気にしていないなんてありえない。だけど、なんともないフリをする彼女の態度に甘え、解決しなければいけない問題から目を背け続けて、ただいたずらに時間だけが過ぎていた。
「それじゃ、一曲目から通しでリハをします。今日が視聴覚室で出来る最後のリハーサルなのでしっかり集中していきましょう」
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