8話「文化祭」

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8話「文化祭」

「先にお化け屋敷行こうやー」  フランクフルトを頬張った七海が、めぐの袖を引く。プチっと弾けた肉汁がケチャプとマスタードの香りを引き連れてみなこの鼻をかすめた。「お化け屋敷?」と前日に配布されていたパンフレットにめぐが視線を落とす。ちなみに、宝塚南の文化祭は生徒の模擬店が禁止されている代わりに、職員とPTAが屋台を出してくれている。 「そう! みちる先輩のクラスがやってるんやで」 「へえ、案外、舞台とダンス意外のクラスもあるんやなー」 「二人も行くやろ?」  ジュウジュウ、と鉄板の上でソースの絡まった焼きそばが湯気を上げている。陽射しを反射する校舎が湯気で歪んで見えた。人がごった返した校門前の広場は、まだまだ夏が勢力を持続している。仮設テントの下で、招待客のチケットをもぎる実行委員たちは暑そうだ。「えー、どうやろ」とみなこは曖昧な返事を返す。 「奏は?」 「お化け屋敷、楽しそうだね」 「奏ちゃん平気なん?」 「うん」
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