8話「文化祭」

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 どうやらお化け屋敷が苦手なのは自分だけらしい。テーマパークの本格的なものを拒むならまだいいのかも知れないけど、さすがに文化祭の出し物で怖がるのは恥ずかしい。 「みなこ、ビビりすぎ」  ケラケラと七海が恥かしげもなく笑い声を上げる。同時にケチャップが器官に入ったのか、ゴホゴホむせた。人を笑った罰だ、とみなこは目を細める。 「みなこちゃん苦手なん?」 「うーん。あんまり得意じゃないけど、みんなが行くなら仕方ないかな……」 「行くなら早く行こうや。昼過ぎから舞台二本も観なあかんねんから」  自分たちのクラスの舞台、それから佳奈が出る『オズの魔法使い』は絶対に観覧しなくちゃいけない。練習があるせいで、午前中は佳奈と回れないのは残念だけど、佳奈の演技には注目だ。  * 「みなこ、ビビリ過ぎてやばかったでー」  夕暮れの校庭に七海の高笑いが響く。オレンジ色に染まった空にはカラスが数羽飛んでいた。外部からの招待者がいなくなり、見渡す限り祭りの後といった雰囲気だ。けれど、すっかり静かになった校舎には、二日目の準備のために残っている生徒たちもチラホラと見られた。文化祭は明日も続く。
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