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確かに佳奈にはなさそうだ。もっとも、無自覚なところを言うと人付き合いが上手いとは言えないのだけど。それを言ったら怒られそうだ。わざわざ春先のことを蒸し返すことはしなくていい。
「佳奈は何でも出来て、才色兼備って感じやもんな!」
七海の褒め言葉に、佳奈は「そんなことない」と否定する。頬を赤くしながら告げられた言葉は、春先のそれとは明らかにニュアンスが異なっていた。
「七海は苦手なものだらけやろ」とめぐが毒づけば、「うちには、なにもないもーん」と七海がお気楽な声を出す。しかし、そんな七海を見つめながら奏が口端を緩めた。
「七海ちゃんは数学だよね」
「そうやったー、数学だけは無理やー」
七海の嘆きは、夕暮れの空に花火みたいに打ち上がっていった。
「ほら、明日は本番やし、そろそろ帰ろ」
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