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パーテンションの向こうにたくさんの人の気配がする。真っ白なライトが、舞台の端を照らしていた。その光の中にグランドピアノが佇んでいる。無数に舞う埃がキラキラと煌めいて、まるでこれから始まるステージを彩っているように思えた。
「本日は、ご来場ありがとうございます。まもなく、ジャズ研究会によるステージが始まります」
舞台裏に設置されたマイクを使い、みちるがアナウンスを始めた。それを合図に、部員たちは動き始める。
一曲目は、知子のソロ曲。『ケルン・コンサート』だ。みちるのアナウンスが終わり、拍手に迎え入れられ、知子が真っ直ぐにピアノへと向かった。客席に向かい深くお辞儀をして、椅子に腰掛ける。
空調の音が支配していた視聴覚室に、柔らかさと鋭さを持ったピアノの旋律が響いた。ジャジィなスタッカートとクラシカルなメロディ、知子の指先が弾く白鍵が、曲の表情を一瞬一瞬変えていく。
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