10話「特別」

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「それじゃ知ちゃんも挨拶お願いね」  ニッコリと微笑むみちるに知子は肩をすくめる。その目は幸せそうな弧を描いていた。 「みちるが言ってくれたように素晴らしいパフォーマンスだったと思います。個人の成長、特に一年生は入部の時に比べて格段にクオリティーが上がっていました。初心者だった高橋くん、経験者だった伊藤さんも清瀬さんも、すっかりジャズが身体に染み付いて、井垣さんや大西さんはもうソロを任せられるし、谷川さんはウッドベースをものにしてくれた。もちろん、二年生の成長も決して止まってはいません。私たち三年生はこれで秋の大会を残すだけやけど、その前に素敵な思い出に残る文化祭になりました。ありがとう」  知子の挨拶に部員から拍手が送られる。知子は少々恥ずかしそうに頭を下げた。それを微笑ましそうに見つめたみちるが「私も褒めてくれてええんよ」と口端を緩める。  「みちるも褒める側の人間やろ」
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