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つんとした知子の言葉が甘ったるく聞こえるくらいに、みちるは嬉しそうにしていた。なんとなく、将来お酒の席で二人はこんな会話をしているんだろうなあ、とみなこは思った。つまりは、二人の関係性が微笑ましかったのだ。
そして、不安や悩みというものは忘れた頃にやってくる。意識のどこかにはあったはずだ。視界にはずっと彼女が映っていたし、奏がこの場を素直に楽しめていないことも分かっていた。けれど、まさかこのタイミングでその瞬間が訪れるとは思っていなかったのだ。打ち上げが一段落して、そろそろ片付けに取り掛かろうかという時、ふと真面目な顔をした杏奈が手を上げた。
全員の注目が集まったのを確認して、彼女は恥ずかしそうに口元を緩めた。
「みんなに話があるんやけど」
「なになに? どうしたん?」
みちるが明るい声で杏奈に訊ねる。彼女が杏奈の神妙な雰囲気を読み取れないのは、ステージで興奮していたせいだろうか。それとも、はぐらかそうとしている杏奈自身の問題だろうか。きっと、どっちもだ。
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